被写界深度を深く・浅くする方法と計算式
被写界深度(ピントが合って見える範囲)とは何か、浅くする方法・深くする方法、超焦点距離とパンフォーカスを、計算例つきで解説します。
被写界深度とは
被写界深度は、ピントを合わせた距離の前後で「ピントが合っているように見える」範囲のことです。レンズが本当にピントを合わせられるのは 1 つの距離だけですが、そこから少し前後にずれた点のぼけが十分に小さければ、人の目にはシャープに見えます。この「十分に小さい」ぼけの大きさの基準が許容錯乱円です。
フルサイズ・50mm・F2.8 で 3 m 先にピントを合わせると、2.74 m から 3.32 m まで、合計 57.7 cm がピントの合う範囲になります。ピント位置より奥の方が手前より広いのが一般的です(この例では手前 26.1 cm、奥 31.6 cm)。
被写界深度の境目ははっきりした線ではなく、少しずつぼけていきます。また、許容錯乱円をどう決めるか(写真を見る大きさ・画面の拡大率)で値は大きく変わります。数値は目安として使ってください。
被写界深度を浅くする方法
背景をぼかして被写体を浮かび上がらせたいときは、被写界深度を浅くします。
- F値を小さくする(絞りを開ける): もっとも直接的な方法です。
- 被写体に近づく: ピントを合わせる距離が近いほど浅くなります。
- 焦点距離の長いレンズを使う: 同じ距離から撮るなら、望遠ほど浅くなります。
- センサーの大きいカメラを使う: 同じ画角・同じ F値なら、センサーが大きいほど浅くなります。
フルサイズ・50mm・3 m にピントを合わせた場合の F値による違いです。
| F値 | 手前の限界 | 奥の限界 | 被写界深度 |
|---|---|---|---|
| F1.4 | 2.86 m | 3.15 m | 28.7 cm |
| F2.8 | 2.74 m | 3.32 m | 57.7 cm |
| F5.6 | 2.52 m | 3.71 m | 1.19 m |
| F11 | 2.18 m | 4.80 m | 2.61 m |
焦点距離については注意が必要です。被写体を同じ大きさに写す(望遠ほど離れて撮る)場合、被写界深度はあまり変わりません。
| 焦点距離・距離 | 写る横幅 | 被写界深度(F2.8) |
|---|---|---|
| 35 mm・2.1 m | 2.16 m | 58.3 cm |
| 50 mm・3 m | 2.16 m | 57.7 cm |
| 85 mm・5.1 m | 2.16 m | 57.4 cm |
ただし、望遠ほど背景が大きく写るため、背景のぼけは大きく見えます。「ピントの合う範囲」と「背景のぼけの大きさ」は別のものとして考えると分かりやすくなります(ポートレートの被写界深度とボケで、背景のぼけの大きさも計算しています)。
被写界深度を深くする方法
風景や集合写真、製品・検査の撮影など、前後に奥行きのあるものを全体にシャープに写したいときは、被写界深度を深くします。浅くする方法の逆で、F値を大きくする、離れて撮る、広角のレンズを使う、センサーの小さいカメラを使う、のいずれかです。
フルサイズ・50mm・F2.8 のピント位置による違いです。
| ピント位置 | 手前の限界 | 奥の限界 | 被写界深度 |
|---|---|---|---|
| 1 m | 97.0 cm | 1.03 m | 6.1 cm |
| 2 m | 1.88 m | 2.13 m | 25.3 cm |
| 5 m | 4.31 m | 5.95 m | 1.64 m |
| 10 m | 7.57 m | 14.74 m | 7.17 m |
センサーの小さいカメラは、同じ画角・同じ F値でも被写界深度が深くなります。APS-C で同じ画角になる 33mm・F2.8 で 3 m にピントを合わせると 87.9 cm で、フルサイズ(57.7 cm)よりも深くなります。スマートフォンのカメラで背景がぼけにくいのはこのためです。
F値を大きくしすぎると、回折という現象で画面全体の解像感が落ちます。高画素のカメラほど影響が目立つため、「深くしたいがシャープさも欲しい」ときは、F8〜F11 程度にとどめるか、ピント位置を変えて撮った複数の写真を合成する方法(フォーカススタッキング)が使われます。
超焦点距離とパンフォーカス
ピントを遠くに合わせていくと、ある距離で被写界深度の奥の限界が無限遠に届きます。この距離を超焦点距離 といいます。
超焦点距離にピントを合わせると、その約半分の距離から無限遠までがピントの合う範囲に入ります。手前から遠景まで全体にピントが合った状態(パンフォーカス)を作る方法として、風景写真やスナップで使われます。フルサイズ・24mm・F8 なら超焦点距離は 2.5 m で、約 1.3 m から無限遠までがピントの範囲です。
センサー・焦点距離・F値ごとの超焦点距離は「風景・パンフォーカスと超焦点距離」の早見表で確認できます。
計算式のまとめ
2. 被写界深度 (DoF) と 許容錯乱円 (CoC)
絞り値 (F値)と許容錯乱円径 から超焦点距離 を求め、ピントが合っているとみなせる前方限界 と後方限界 を計算します。
のときは後方限界が無限遠になります。
- : 超焦点距離 (m)
- : 絞り値 (F値)
- : 許容錯乱円径 (mm)。写真基準 、画素ピッチ基準 ( = 1〜2)、またはカスタム値
- : 前方限界距離・後方限界距離 (m)
計算は薄肉レンズ近似による幾何光学計算です。ディストーション(歪曲)、フォーカスブリージング、回折、レンズ収差は考慮していません。