許容錯乱円とは?写真基準と画素ピッチ基準の違い
被写界深度の計算に使う許容錯乱円とは何か、写真基準(対角線 ÷ 1500)と画素ピッチ基準の違い、用途に応じた選び方を解説します。
許容錯乱円とは
ピントが合っていない点は、センサー上で点ではなく小さな円(錯乱円)になって写ります。ピントの位置から離れるほど、この円は大きくなります。許容錯乱円は、「この大きさまでの円なら、ぼけていないとみなす」という基準の直径です。
被写界深度や超焦点距離は、この許容錯乱円 をもとに計算します。 を小さく(厳しく)すると被写界深度は浅く、大きく(ゆるく)すると深くなります。つまり被写界深度は、レンズやカメラだけで決まる値ではなく、「どれくらいの大きさで写真を見るか」「どこまでをシャープとみなすか」という見る側の条件を含んだ値です。
写真基準(対角線 ÷ 1500)
写真では、センサーの対角線の 1/1500 を許容錯乱円とする考え方がよく使われます。写真全体を一般的な大きさにプリント(または画面に表示)して、普通の距離から見たときに、ぼけが目で見分けられない大きさを想定したものです。
| センサー | 許容錯乱円(対角線 ÷ 1500) |
|---|---|
| フルサイズ | 0.0288 mm |
| APS-C | 0.0188 mm |
| マイクロフォーサーズ | 0.0144 mm |
| 1型 | 0.0106 mm |
| 2/3型 | 0.0073 mm |
| 1/2.3型 | 0.0051 mm |
フルサイズでは約 0.029 mm で、レンズの被写界深度目盛りなどで使われてきた 0.03 mm に近い値です。対角線の 1/1730 とする考え方(Zeiss の式とよばれるもの)など、より厳しい基準もあります。
写真基準は写真全体を鑑賞することを前提にしているため、画素数には関係しません。高画素のカメラで撮った写真を拡大して見ると、写真基準でピントが合っているはずの範囲でも、ぼけが見えることがあります。
画素ピッチ基準
マシンビジョンや計測、画像を等倍(1 画素 = 画面の 1 画素)で確認する用途では、ぼけが画素の大きさを超えると、そのまま画像の劣化として現れます。そこで、許容錯乱円を画素ピッチの 1〜2 倍にとる考え方が使われます。
係数 を 1 にすると「ぼけが 1 画素以内」というもっとも厳しい条件、2 にすると少しゆるい条件になります。フルサイズ・約 4500 万画素(横 8192 画素)では画素ピッチが 4.39 µm なので、写真基準の約 7 分の 1 の大きさです。
50mm・F5.6・3 m にピントを合わせたときの比較です。
| 基準 | 許容錯乱円 | 被写界深度 | 超焦点距離 |
|---|---|---|---|
| 写真基準(対角線 ÷ 1500) | 0.0288 mm | 1.19 m | 15.5 m |
| 画素ピッチ × 2(約4500万画素) | 0.0088 mm | 35.0 cm | 50.8 m |
| 画素ピッチ × 1(約4500万画素) | 0.0044 mm | 17.4 cm | 101.6 m |
どちらの基準を使うか
- 写真・映像を鑑賞用に撮る: 写真基準。レンズの被写界深度目盛りや、多くの被写界深度計算と同じ前提です。大きくプリントする・等倍で確認する場合は、少し厳しめ(被写界深度を浅め)に見積もります。
- 外観検査・計測・画像処理: 画素ピッチ基準。検出したい欠陥がぼけで消えないよう、係数 1〜2 で確認します。
- 高画素機で細部まで見る写真(風景・建築・複写): 写真基準と画素ピッチ基準の間。画素ピッチ × 2 程度を目安にすると安全です。
シミュレーターでは、許容錯乱円の基準を「写真基準」「画素ピッチ基準(係数 1〜2)」「カスタム(mm で指定)」から選べます。画素ピッチは出力解像度から計算するため、出力解像度も合わせて設定してください。
計算式のまとめ
2. 被写界深度 (DoF) と 許容錯乱円 (CoC)
絞り値 (F値)と許容錯乱円径 から超焦点距離 を求め、ピントが合っているとみなせる前方限界 と後方限界 を計算します。
のときは後方限界が無限遠になります。
- : 超焦点距離 (m)
- : 絞り値 (F値)
- : 許容錯乱円径 (mm)。写真基準 、画素ピッチ基準 ( = 1〜2)、またはカスタム値
- : 前方限界距離・後方限界距離 (m)
計算は薄肉レンズ近似による幾何光学計算です。ディストーション(歪曲)、フォーカスブリージング、回折、レンズ収差は考慮していません。