マシンビジョン・外観検査のレンズ選定手順

外観検査では「どれだけの範囲を」「どれだけ細かく」写すかでカメラとレンズが決まります。ワーキングディスタンス(WD)・視野・必要な分解能から、画素数と焦点距離を決める手順を計算例とあわせて紹介します。

逆算モードで計算する

選定の手順

  1. 視野を決める: 検査するワークの大きさに、位置ずれの余裕(10〜20% 程度)を足します。
  2. 必要な分解能を決める: 見つけたい最小の欠陥を 3〜4 画素以上で捉えられるよう、1 画素あたりの寸法(GSD)を「欠陥の大きさ ÷ 3」以下にします。
  3. カメラの画素数を決める: 視野 ÷ GSD が必要な横画素数です。これを上回るカメラを選びます。
  4. 焦点距離を決める: 焦点距離 = WD × センサー有効幅 ÷ 視野幅。計算値より短い(視野が広くなる)市販レンズを選ぶのが基本です。
  5. 被写界深度を確認する: ワークの高さのばらつきがピントの範囲に収まるか、画素ピッチ基準の許容錯乱円で確認します。

センサーの縦横比と出力解像度の縦横比が違う場合(例: 4:3 の 2/3型に 2448×2048 の出力)、使われるのはセンサーの一部です。当ツールは出力の縦横比に合わせた有効撮像領域で計算します。

計算例

計算例 1: ワーク 100 mm・欠陥 0.2 mm・WD 300 mm

項目値
必要な視野(ワーク +20%)120 mm
必要な分解能(欠陥 ÷ 3)0.067 mm/px 以下
必要な横画素数1800 px 以上
選んだカメラ2/3型 2448×2048(有効 7.89×6.60 mm)
計算上の焦点距離19.7 mm → 市販の 16 mm を選択
16 mm での視野147.9 × 123.7 mm
分解能(GSD)0.060 mm/px(条件を満たす)
被写界深度(F8・画素ピッチ基準)17.2 mm

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計算例 2: ワーク 250 mm・欠陥 1 mm・WD 500 mm

項目値
必要な視野(ワーク +20%)300 mm
必要な分解能(欠陥 ÷ 3)0.333 mm/px 以下
必要な横画素数900 px 以上
選んだカメラ1/2型 1280×1024(有効 6.00×4.80 mm)
計算上の焦点距離10.0 mm → 市販の 8 mm を選択
8 mm での視野375.0 × 300.0 mm
分解能(GSD)0.293 mm/px(条件を満たす)
被写界深度(F5.6・画素ピッチ基準)210.4 mm

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計算例 3: ワーク 30 mm・欠陥 0.06 mm・WD 150 mm

項目値
必要な視野(ワーク +20%)36.0 mm
必要な分解能(欠陥 ÷ 3)0.020 mm/px 以下
必要な横画素数1800 px 以上
選んだカメラ2/3型 2448×2048(有効 7.89×6.60 mm)
計算上の焦点距離32.9 mm → 市販の 25 mm を選択
25 mm での視野47.3 × 39.6 mm
分解能(GSD)0.019 mm/px(条件を満たす)
被写界深度(F11・画素ピッチ基準)2.1 mm

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WD・焦点距離・視野の関係

視野の横幅は WD に比例し、焦点距離に反比例します。設置スペースの都合で WD が決まっている場合は、この表から焦点距離の見当をつけられます(2/3型・2448×2048、有効幅 7.89 mm)。

焦点距離WD 100 mmWD 200 mmWD 300 mmWD 500 mmWD 1000 mm
8 mm98.6 mm197 mm296 mm493 mm986 mm
12 mm65.7 mm131 mm197 mm329 mm657 mm
16 mm49.3 mm98.6 mm148 mm247 mm493 mm
25 mm31.6 mm63.1 mm94.7 mm158 mm316 mm
35 mm22.5 mm45.1 mm67.6 mm113 mm225 mm
50 mm15.8 mm31.6 mm47.3 mm78.9 mm158 mm

同じ視野を得るなら、焦点距離の長いレンズを離して使う方が、ワークの高さの違いによる写る大きさの変化(遠近の影響)が小さくなり、照明を置くスペースも取りやすくなります。一方で装置は大きくなります。

F値と被写界深度・回折

計算例 1(16 mm・WD 300 mm、画素ピッチ 3.22 µm)で、F値を変えたときの被写界深度です。F値を大きくすると被写界深度は深くなりますが、回折によるぼけ(波長 0.55 µm でのエアリーディスクの直径 ≈ 2.44 × 0.55 µm × F値)も大きくなります。

F値被写界深度(画素ピッチ × 1)被写界深度(画素ピッチ × 2)回折によるぼけ
F2.86.0 mm12.0 mm3.8 µm
F48.6 mm17.2 mm5.4 µm
F5.612.0 mm24.1 mm7.5 µm
F817.2 mm34.4 mm10.7 µm
F1123.6 mm47.5 mm14.8 µm
F1634.4 mm69.6 mm21.5 µm

回折によるぼけが画素ピッチの 2〜3 倍を超えると、細かい欠陥のコントラストが目に見えて落ちます。深い被写界深度と高い解像力を両立しにくいときは、画素ピッチの大きいカメラにする、テレセントリックレンズを使う、ワークの高さのばらつきを治具で抑える、などを検討します。

注意点

監視カメラの画素密度と距離の目安 / ポートレートの被写界深度とボケ / 風景・パンフォーカスと超焦点距離 / ドローン空撮の撮影範囲と GSD